海外営業物語!ブルジョワ駐在員 MacBook Proを返品する(2)

海外営業物語

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「え?なんで返品しないの?」

週末が開けた月曜日。ジムはキョトンとした顔で俺に言った。会話が噛み合っていない。俺には、彼が言っている言葉の意味が理解できなかった。

「え?返品なんて出来ないでしょ?箱開けちゃったんだよ。」

そう、問題はそこである。箱は開けてしまったし、更に言うと製品自体を取り出して保護フィルムを剥がし、電源を入れ、普通にパソコンとして使用してしまった。常識的に考えて、返品出来る訳がないのだ。

日本の習慣で言うと、返品条件は未開封、未使用の状態でレシートがある場合だけだ。開封した瞬間にその商品は中古となり、価値が落ちる。一度でも箱を開けて使用したら、返品は不可能なのだ。

ところが、どうやら俺の考えは完全に間違っていたようである。思い出してほしい。ここは日本ではなく、アメリカだ。

「そのパソコン、気に入ってないんだろう?使った後でもパソコンは返品出来るぞ。そうレシートに書いてなかったか?」

ジムの発言を聞いて、俺は「まさか!」と思って財布を取り出した。Macbook Proのレシートは、2日前に購入した時に財布に入れて以来、そのまま財布に入りっぱなしになっていたのだ。俺はレシートに記載されている内容を落ち着いて読んだ。

・商品購入後30日以内の返品を受け付ける。

・返品の際はこのレシートと製品を持参すること。

レシートにはこれしか書かれていなかった。確かに、日本でよく見る「返品は未開封の商品に限る」の文言がない。ジムにレシートを見せると、彼は頷きながらこう言った。

「な。思ったとおりだ。気に入らなければ、箱を開けていようと、使用済みだろうと、普通に返品出来るよ。金は全額返ってくる。アメリカじゃ別に普通だぞ。」

土橋さんに確認

ジムの話は、俺には信じがたかった。使用済み商品の返品を許したら、アメリカの電気屋は返品された商品をどうしているのか?そんな方法で儲けが出るのだろうか?全員が全員使用と返品を繰り返したら、電気屋は破産するだろう。俺は、念の為土橋さんにも話を聞くことにした。

「返品出来るよ。俺も最初は戸惑ったけど、慣れると便利なもんさ。最近は、気に入らなければ返品するつもりで、取り敢えず買うことにしてる。まぁ、実際に返品する事は殆どないけどね。一応欲しいと思ったものだけ買っているから。」

俺は空いた口が塞がらなかった。どうやら、アメリカではコレが普通らしい。と言うことは、俺の1500ドルも問題なく戻ってくるはずだ。俺は喜ぶべきだったが、あまりのあり得なさにただ呆然としていた。

「文化の違いか・・・」

その日、俺は仕事を終えると早速自宅に帰り、パソコンの返品作業に移った。返品出来ると周囲の人間が言っても、俺はまだ信じられずにいたのだ。少しでも指紋がついていたり、箱が曲がっていたら、難クセをつけられて返金されないかもしれない。俺はパソコンを初期化し、必死に剥がしたフィルムを貼り戻し、箱に詰め直した。

そして、車で閉店間際のBest Buyへ向かった。

返品許可

Best Buyに到着した俺には、やるべきことは分かっていた。サービスカウンターだ。サービスカウンターに返品しなければならない。俺は事前に聞いていた土橋さんのアドバイスに従って、一目散にサービスカウンターヘ向かい、そこにいた女性店員へ話しかけた。

「Macbook Proを買ったんだけど、どうも俺が期待していた商品と違くて・・・。返品させて貰えないかな?」

心の弱さが出てしまった。本来、「返品させてくれ」と強く出るべき所だが、返品出来るか不安だったため、疑問系で質問してしまった。女性店員は表情を変えず、慣れた口調でレシートと商品を要求した。俺は準備してきたMacを手渡した。

彼女は俺が梱包し直した箱を開け、Macを取り出し、電源がつくことを確認した。そして、製品の型番とレシートを照合し、顔を上げて「OK」と言い、1週間以内にクレジットカード会社を通じて購入代金を返金すると言った。

「本当に?これで終わり?こんな簡単で良いの?」

俺は内心疑問だらけだったが、折角認めてくれた返品をオジャンにするつもりはない。落ち着いた表情を装って堂々とその場を立ち去り、再度パソコン売り場へ向かった。Macbook Proを返品した俺には、新しいWindowsパソコンを再度購入する必要があったし、そもそも俺が開けたMacBook Proがどうなるのか、そのヒントを見つけたかったのだ。

売り場に到着した俺は、すぐにその答えを見つけた。Mac売り場には新品の製品の他に、「訳あり商品」が値引き付きで展示されていたのだ。これらの商品は、特別値引きの札と共に、大体通常より10%引きで販売されていた。

訳あり商品の売り場自体は常にそこにあったのだが、俺はMacbook Proの新品を購入するのに夢中で、その存在に気付いていなかったようだ。俺が今返品したMacbook Proは、恐らく店側で初期化作業をした後、梱包し直してこの棚に陳列されるのだろう。俺はこのシステムの仕組みを、少しだけ理解した。

「いやぁ、1500ドルが返金されて助かった。」

俺は独り言を言いながら、閉店間際の店で次に買うべきWindowsパソコンを物色し始めた。

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K

共働きの妻と愛する子供を持つバイリンガルパパ(TOEIC950点、英検1級)。家事、育児、仕事と毎日忙しく奔走中。忙しすぎて風邪でダウンする事が時々ある。10年の海外営業経験を活かし、ブログでは英語学習のノウハウ、幼児英語教育(おうち英語)、海外営業の関する情報を提供しています!